インテリアだけではなくエクステリアも大切な家づくり
住宅を建てるとき、ほとんどの方は建物内部のデザインや機能であるインテリアの部分を一番気にされるはずです。その一方で、建物外部のエクステリアについては、建物の本体工事とは別にすることがおおく、家が出来上がったあとに、あらためて考えることが少なくありません。
しかし、家族が生活する場として住居をとらえるならば、クオリティ・オブ・ライフを決定するものは建物の中だけにあるわけではありません。当然、エクステリアも含めた家づくりをトータルでおこなうことが、居心地良く長く住みたいと思える我が家を手に入れるためには必要ではないでしょうか。
エクステリアもインテリアと同じように、建物外部のスペースをどのように使いたいかという青写真を最初に描くことが大切です。植栽を楽しむ庭園にしたい場合と子どもが遊べるスペースにした場合とでは、使用する構造物や配置に大きな違いがでてきます。また、建物本体のデザインとの一体感ということも、街並みを美しく彩るためには大切なことです。
エクステリアを構成する「外構」といわれるものには、以下のものが含まれます。
門扉・門柱
塀(フェンス)
アプローチ
デッキ・テラス
カーポート・ガレージ
植栽
照明
今回は、外構のなかでも「塀」についてとりあげてみます。
ブロック製が目立つ日本の塀事情
街中を見回してみると、一戸建て住宅の塀のほとんどがブロック塀であることに気づきます。ざっと見積もって9割以上の確率でブロック塀が採用されているのではないでしょうか。
なぜ日本の住宅でこれほどまでブロック塀が使われていることがおおいのでしょうか。
ブロック塀は戦争後いっきに普及しましたが、その理由は、戦災で焼け野原になった場所では境界杭がなくなっていることがおおかったことに加え、その昔は測量制度が低く公簿と実測の土地面積の相違が発生することがあたりまえだったため、自分の敷地を明白にする意味で、境界線の中央に頑丈なブロック塀を積み上げるようになったようです。
この経緯からわかるように、建物とのデザイン的な一体感とか、住む人の家での過ごし方ということではなく、境界の区切りとしての必要性からブロック塀が多用されていることになります。
本来は木製塀、鉄製フェンス、生垣、何もしないということも含めて、いろいろ選択肢があるのですが、隣地との境界線を明確にするために、一定の高さが必要になり、さらに安価な工事費にあらがえず、見栄えの悪さと隣地同士の土地を二分割してしまうブロック塀が幅を効かせているということでしょう。
しかし、地震大国である日本では、1977年の宮城沖地震でブロック塀の大量に倒壊したことから、高さや構造について規制が加えられるようになりました。それでも、その後の熊本地震、大阪北部地震のときもブロック塀倒壊の被害が多数でています。
平成13年の建築基準法施行令の改定によって、現在はブロック塀の高さは地盤面から2.2mに制限されています。また、1.2mの高さを超えるブロック塀については定められた間隔で控え壁を設置する必要があります。しかし、古くから設置されているブロック塀のなかには、この新基準を満たしていないものが多数あるために、大きな地震が起きると被害が出る原因になっています。
自分の財産である土地を守るためには、これからも隣地と接する部分にブロック塀が使われることは避けられないのでしょうが、道路面などのファサードについては、もう少し自由にいろいろなタイプの塀やフェンスを使ってみることを検討することで、家づくりの楽しみを増やすことができると思います。
種類が豊富な日本の伝統的な塀
ブロック塀が多用される以前の日本では、土塀、築地塀、竹垣、生垣、木塀・木柵など、いろいろな種類の塀が使われていました。
こう見ると、日本の塀文化はバリエーションに富んでいたことがわかります。水嶋建設では、土壁や築地を一般家屋で使うことはありませんが、日本家屋にマッチした伝統的な塀も家を建てる方のご要望に応じてご提案をしています。
そこで今回、木塀のなかでも大和塀を採用されたS様邸が建築中ですのでご紹介いたします。
大和塀を取り入れた和風古民家旅館風の住宅-S様邸
大和塀と呼ばれる理由は、大和打ちという板を内側と外側で交互に張る方法で造られた塀だからです。見た目としては、内側と外側の板が多少重なるイメージでデコボコにしています。
そのため、板と板の間に自然と隙間が生まれ、風が通りやすく板が乾燥しやすいため、木材に優しく、木が長持ちするようになります。大和塀は、古い家や神社などでもよく見かけます。
隙間がある大和塀は、外から中が多少見えてしまいます。セキュリティの観点から、機能性が劣ると考える方がいるかもしれませんが、塀の内側に入り込んだならば、外の道路からまったく中を見ることができないブロック塀などと比べると、中の様子が多少わかる大和塀の方が防犯性に優れているという見方もできます。
S様邸の場合、もともとお客様が和風古民家旅館のイメージを持った家を希望されていたため、建物をより引き立たせようと大和塀を採用しました。ただし、建築区域の地区計画により隣地や道路面に高い塀や囲いが出来ないため、ポイント使いをしています。
幸いなことに、S様のお父様が石屋さんを営んでいるため、庭に灯篭やあらゆる石を設置することで、たいへん趣のある仕上がりになりました。
古くから使われている大和塀は古い街並みだけではなく、新しい住宅にもとてもよく似合います。ただし、木塀はコスト面では割高になることは事実です。でも、国産材を使った木の家なら、木の塀は絶対に合います。アルミ製のフェンスでもいいのですが、職人がつくる塀はめちゃくちゃいいですよ。是非一度ご自身の目で確認してみてください。